このサイトについて
走る人間が、走る人のためにつくった道具です。
PaceVance とは
PaceVance は、ロードとトレイルのためのペース計画ツールです。距離とゴールタイムだけでなく、登り・下り・路面を織り込んだ実際の労力まで含めて、レースの各区間を組み立てられます。
ルートを読み込み、目標を設定すれば、レースの各部分にどれだけかかるべきかを算出します。そのうえで、モデルよりもあなたのほうが地形をよく知っている場所では、上書きできるようになっています。
ペースの計算方法
あなたが与えるのは自分についての1つの数値だけです。平坦なロードをレース強度で維持できるペース。そこから各区間が算出されます。モデルを選ぶ必要はありません。どれが正しいかは答えのある問いであり、それを当てるのは私たちの仕事で、あなたが推測することではないからです。登りと下りは別々に扱います。あなたを遅くしているものが、方向によって別物だからです。
登り:限界を決めるのはエネルギー
Minetti ら(2002)に基づいて算出しています。−45%から+45%までの勾配で走行時の代謝コストを測定した実験室研究です。登りでは維持できる出力が限界を決めるため、コストはそのまま素直にペースへ変換できます。コストが2倍なら時間も2倍です。
pace = flat pace × Cr(i) / Cr(0)
これは Minetti の走行コスト Cr です。同論文は歩行の曲線 Cw も当てはめていますが、係数が異なり、それを使うとあらゆる登りを過大に罰することになります。多項式は −45% から +45% の範囲で当てはめられているため、その外へ外挿せず範囲内に丸めています。既知の登坂速度とも整合します。5:00/km のランナーが +30% の持続した勾配を登ると、およそ毎時1030mの獲得標高になります。
下り:限界を決めるのはブレーキ
下りには専用の曲線があります。実在するが控えめな短縮効果で、−11%あたりが最大。そこから先は急になるほどブレーキのコストが増え、−22%を超えると短縮効果を上回ります。−30%の下りは、路面を考慮する前の段階で、平坦時のペースよりおよそ2割よけいにかかります。
fastest at d = 0.11, where it is 10% under flat pace
この曲線は私たちのもので、公表されたモデルではありません。ここでは代謝コストは適切な道具ではありません。Minetti の数値をそのまま使うと、−20%の下りは平坦の半分のコストになります。それを速度として読めば、5:00/km のランナーが 2:30/km で下ることになります。そんな走りをした人はいません。下りを実際に制限しているのは伸張性収縮によるブレーキと、足を置ける場所です。そこで曲線はそちらに合わせてあります。最良でも −11% 付近で平坦より約10%速い程度で、これは下り区間でランナーが実際に刻む値と一致します。
路面:標高プロファイルにはわからないこと
GPXファイルには距離と標高は入っていますが、表面のことは何も書かれていません。プロファイルが同一でも、一方が林道で他方が岩場なら30分の差が出ます。だから路面は尋ねる必要があります。しかも言葉で尋ねます。係数を見積もれる人などいないからです。
| 登り | 下り | |
|---|---|---|
| ロード | 1.00 | 1.00 |
| 砂利 / 林道 | 1.02 | 1.06 |
| トレイル | 1.05 | 1.15 |
| テクニカルなトレイル | 1.10 | 1.32 |
| 岩場 / 手を使う道 | 1.16 | 1.55 |
ここでも登りと下りは別々に計上され、そこが要点です。荒い路面は登りではほとんど影響しません。どのみち遅いからです。下りでは大きく効きます。ブレーキをかけ、ラインを選ぶからです。両方向を同じだけ遅くする設定なら不要でした。ペース × 勾配 × 路面はどの項に織り込んでも同じ積になるので、それは平坦時のペースを二度書いただけになってしまいます。
計算を公開する理由
トレイルランナーは本気で計画を立てます。自分の身体も、自分の地形も、自分のレース歴も知っています。どんな計算ツールもあなた以上には知りません。ただ計算が速いだけです。
だからモデルは出発点であって、判決ではありません。ある区間のペースの上から自分の値を書けば、その区間は固定されます。書いた数値がその区間のコストになり、残りのプランが目標タイムを保つようにその周りで組み直されます。歩くとわかっている登りを歩きのペースで固定すれば、ほかがすべて締まって帳尻を合わせます。
各区間は登りと下りを別々に保持し、合算する前にそれぞれを単独で計算します。かわりに標高の正味差で計算すると、周回コースや往復コースは差し引きゼロになり、平坦時のペースが返ってきます。トレイルのコース形状として最も一般的な形に対して、それはまさに正反対の答えです。
どんなモデルにも前提が織り込まれており、私たちのものも例外ではありません。Minetti は実験室で測ったランニングエコノミーで、体力や走り方で変わります。下りの曲線はブレーキのコストについての判断であって、測定値ではありません。出力はレースの十分に根拠のある下書きとして扱い、自分のほうがよく知っている部分は上書きしてください。
技術構成
参考文献
- Minetti, A.E. et al. (2002). Energy cost of walking and running at extreme uphill and downhill slopes. Journal of Applied Physiology, 93(3), 1039–1046.